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過去ありて候 |
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| 私がその人たちの事を知った事情を、まず、お話しするべきでしょうね。いや、それよりまず、私の事をお伝えするべきでしょうか。もちろん、名前と身代を告げたからと言って驚かれるような身分じゃございません。ただの、町医者でございます。近ごろは蘭学医が何かと幅を利かせているようですが、私は少々趣が違います。心の病を治す医者、といえば判りやすいでしょうか。気がふれたもの、物覚えの衰えたもの、何やら心持ちの悪いもの、そういう目に見えない病を治すことを生業としております。 珍しいですか?そうでしょうね。江戸広しと言えども私ぐらいなものでしょう。そういう仕事をしている都合上、いろんな方々がやってまいります。中には、秘密を明かせばこちらが消されかねない方々もおいでです。権力の中心にいるようなお方はもちろん、下々にいながらも修羅の道を歩いてきた方々もいらっしゃいます。そうですね、お察しのとおり、皆さんが、仕掛人とか仕置人とか、仕事人という呼び名もありましたね。そういう裏の稼業の方々もおいででした。 ?そんな方々の事をぺらぺらと喋っていいのかと?……どうやら私はその人たちの事を語らねばならない役目をしょい込んでしまったようなんですよ……まぁそのあたりはおいおいお話ししてまいりましょう。 まずもって印象深いのは巳代松さんでございましょう。というのも、私が彼らの存在を知ったのが、巳代松さんを患者として診たのがきっかけだからでございます。 小雪のちらつく寒い日だったと記憶しております。おていと名乗る女性が夜半に私の家へ忍ぶようにやってまいりました。もとより、心の病を抱える方々は昼日中に私の診療所を訪れるのを良しといたしません。大抵は日が沈みだした黄昏時かそれより遅くが当たり前のようになっていました。ですから、いつものように私が診察室に彼女を迎え入れると、彼女は開口一番、自分の夫を診に来てくれないかと、あたりをはばかるような小声で、しかしきっぱりと、私の瞳を射ぬくかのような鋭い視線とともに言ったのです。 これでも人様の心を覗くようなことを商いにしているのですから、彼女がどういう心持ちでここまで来て、私に往診を頼んだかは、それだけで計り知ることができました。それと同時に、私の心の中に何かうずくものを感じました。なんと言ったらいいのでしょうか。今まで奥底に眠っていた何かが起きだすような感触と言うのでしょうか……いけませんね、人様の心を覗く人間が自分の心持ちが解らないようでは……。 何はともあれ、おていに案内されてついた家は長屋の端にある花屋の二階でした。どうやらおていとその夫はそこに身を寄せていたようです。家に上がると、若い男が床に伏せたもう一人の男の様子を診ていました。若い男は、床についているのは巳代松という名だと教えてくれたのです。話を聞けば巳代松は長い間寝たきりで起きても自分のことすらも解らないほどの状態だったのですが、つい先程、突然起き上がりある人物の名とおぼしき言葉を発したというのです。長年、そういう状態だった人間が突然言葉を発するというのも不可解なことでございます。私が何て言ったのだと若い男に尋ねると、若い男は、少し躊躇した後、「八丁堀……と」と答えたのでございます。 其の途端、お笑いくださいまし、私の気がへんになってしまったのです。いえ、そういう意味のものではなく、たとい親兄弟が死んだと聞かされてもこれほどではないだろうと思うぐらい、心が乱れてしまったのです。これでは診察どころではありません。どちらが患者かわかったものではありません。そんな私の様子を見た若い男が何かを思いついたように顔をゆがめました。男は、私にこう言いました。「あんた、ひょっとして三味線弾きの…… |
蘭学医 必殺のメンバーで蘭学医となると「必殺仕事人III」で登場した西順之助が出てくる。アイドルだったひかる一平がその役に扮し、古いファンから失笑を買ったが、その後「必殺仕事人IV」「必殺仕事人V」「必殺仕事人V旋風編」と出演しすっかりおなじみの顔になってしまった。「必殺仕事人V旋風編」で晴れて医者となり歯科医を開業したが、なんとこのシリーズで爆死してしまう。もう少しなんとかならんかったのか、と思わせる残念な終わり方だった。 もう一人、「暗闇仕留人」の石坂浩二も実は高野長英に師事した蘭学者という設定があった。さらに言うなら高野長英その人もなんと必殺に登場している「新必殺からくり人」の近藤正臣演じた蘭平衛がその人。 仕掛人・仕置人・仕事人 “呼び名”を放映順に追ってみると、仕掛人・仕置人・助け人・仕留人・仕事屋稼業・仕置屋稼業・仕業人・からくり人・商売人・(うらごろし)・仕事人・仕舞人・渡し人・仕切人・橋掛人・剣劇人となる。よくもこれだけ思いついたもんだと感心してしまうけど、やはりピンとくるのは上タイトルの3つでしょうね。 巳代松 強烈な印象を残したキャラクターである。「新必殺仕置人」に鋳掛屋として登場し、手製の竹鉄砲を武器とした殺し屋。ところがこの竹鉄砲、射程距離が二間しかないため、相手がその距離まで近づくのを待たなければならない。おまけに撃つと銃身が破裂して自分も吹っ飛んでしまうという怖い代物。鋳掛屋ならもう少し丈夫なものを作れんのか?と思ってしまった。本編で彼が「あと、一間、あと……」とつぶやきながら銃を構えていたシーンは緊迫感にあふれていた。 おてい 「新必殺仕置人」で、必殺の常連ともいうべき歌手(タレント)中尾ミエが扮していた。仕置人の情報係として活躍していた正八(火野正平)の相棒で、普段は女スリとして生計をたてている。最終回で奉行所に捉えられて拷問の末植物人間になってしまった巳代松を救い出し、二人で江戸を去っていった。記憶にはないのだが、この二人は惚れあっていたらしい。 花屋 花屋とくればもう“花屋の政”だろう。村上弘明演じた政は後期の必殺にはなくてはならないキャラクターになってしまった。パターンとしては三田村邦彦が演じた秀のキャラクターを踏襲したものだと言える。木や花の枝を相手の急所に刺していく殺し方は実に絵になっていた。後には職業を変えて武器も手槍を使用したがこれがまたかつての「必殺仕置人」棺桶の錠が使用したものを彷彿とさせるものでファンは狂喜乱舞したものである。 八丁堀 なにはなくとも八丁堀。必殺シリーズでは八丁堀と言えば必殺の象徴藤田まこと演じる中村主水のことだが、もともとは時代劇で同心を意味する隠語(だと思った)。 |